ミュージアムレポート

HOME > ミュージアムレポート > VOL.34 > 地鉄や刃文を際だたせるための照明と展示ケースの妙 刀剣博物館

最も苦心したのが、短刀を展示する独立型の覗きケースの開発だ。最初のモックアップでは平らな覗きケースとし、従来どおり鑑賞者に対して水平に短刀を置いて、手前からスポット照明を当てた。しかし、それでは地鉄も刃文もほとんど見えなかった。そのため、展示ケースの形状自体をいちから見直し、三度にわたるモックアップ検証によって、最適の展示環境が追求された。その結果、従来の常識を超えた覗きケースが実現した(上の写真)。

まず、平らな形状では光源からの照射角度が制限されるため、前面を低く背面を高くして傾斜をもたせた。そして、手前下部と背面上部にライン照明を設置し、スポット照明は手前ではなく背面上部に設置した。そこに短刀を鑑賞者に対して垂直に置くことで、繊細な地鉄と刃文を浮かび上がらせることに成功したのである。このような形でLEDスポット照明をケースの背面側に設置した覗きケースは、これが業界初となる。

また、鑑賞しやすいようにガラス面を大きく取っているが、展示ケース外部への光の漏れがほとんどないので、壁面展示ケースには独立ケースの照明の光が一切映り込んでおらず、静謐な空間を実現できている。これもこだわりを持って徹底したモックアップ検討を積み重ねた結果だと言える。

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