ミュージアムレポート

HOME > ミュージアムレポート > VOL.17 > その作品のためだけの光と空間を創り出す、最高水準の展示環境を実現 根津美術館

[展示室5] 工芸の部屋にある独立型展示ケースは、小さい作品を展示するためのケース。はじめは600mm角の大きさをめざしたが、免震装置の製作寸法上650mm角に落ち着いた。
根津美術館の独立型展示ケースは、5面ガラスケースではなく、すべて上部に照明装置が付いている。これは、蒔絵の手箱や陶磁器の壺など日本や東洋の美術品は、天井からスポットライトで強い光をあてるよりも、和ろうそくから太陽の光まで表現できるLEDライトの繊細な光で近い位置からほんのりと照らすほうが、作品が美しく見えるためである。
上部の光源部分はアルミルーバーで覆い、LEDの光の粒が作品に映りこまないような配慮もおこなっている。

「独立型展示ケースを導入する際、はじめに提案されたのは、5面ガラスケース。でも、当館のもっている品物の良さを引き出すためには、上部照明装置は絶対に必要でした。デザインだけを先行すると、肝心の作品を置いたときに良くないこともあるので、そこはこだわりました」と西田副館長は話す。

また、これら根津美術館の独立型展示ケースで特筆すべきは、上部照明の電源をどこから引いているかわからない構造になっていることだ。「鑑賞の邪魔になるものは徹底的に省く」という考えのもと、技術を研ぎ澄ました結果、業界初の画期的なアイデアで電源の取り込み口を隠すことに成功した。

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