HOME > ミュージアムレポート > VOL.28 > 地鉄の模様と刃文が浮かび上がる瞬間をとらえる。森記念秋水美術館
日本刀を引き立たせるためにもっとも重要な要素の一つが照明である。そのため、展示環境づくりを計画する段階で、照明テストが何度も繰り返された。その結果、採用された照明のシステムは、外部の天井からのスポットライトと展示ケース内の照明の組み合わせである。
また、照明テストによって、繊細な地鉄の模様や霞のように立つ映り(うつり)、そして刃文が際立つのは3000K(ケルビン)弱であることが判明したため、外部のスポットライトは原則、この色温度に設定している。しかし、この低めの色温度では、刀身が赤みを帯びてしまい、鉄本来のシルバーに輝く美しさが十分に表現できない。そこで、それを補うために、展示ケースの内部照明の色温度を高くしている。
色温度を下げると地鉄の模様や刃文が浮き出てくるが、刀身が赤っぽくなる。逆に色温度を高くすると、刀身は輝き出すが、刃文が白く飛んでしまう。一振りごとに適切なバランスを見出すために、照明や展示位置、刀身の角度など、微妙な調整が求められる。