ミュージアムレポート

HOME > ミュージアムレポート > VOL.30 > 伝統と最新技術の融合で、展示と保存の両立を追求 MOA美術館

「黒漆喰の宇宙のような空間」と新素材研究所の榊田氏が表現する、周囲をぐるりと黒漆喰の壁で覆った特別室が第2展示室の中央を占める。国宝の野々村仁清作「色絵藤花文茶壺」を展示するために作られた空間だ。

洞のような部屋に足を踏み入れると、暗闇の中に光の柱が立ち、「色絵藤花文茶壺」だけが浮かんでいるように見える。

照明は展示ケース上部からのLED照明だけで、他に一切の照明はない。光源から壺までの距離は約2m。光の角度を調整するためのルーバーが2枚使われており、光源に近い1層目のルーバーで指向性を出し、2層目のルーバーで少し拡散光ぎみにしている。

壺のような丸い形状のものは、下部をよく見せるために下からスポットを当てることがあるが、ここでは作品だけに集中できるように使用せず、白い床面の反射をうまく使って、やわらかな光で壺全体を照らすことに成功している。

また、作品全体を照らそうとして、さまざまな角度から光をあてると、影が何重にもできてしまうので、展示ケースの上部照明だけで影が一つになるように光の角度を調整し、自然な感じにライティングしている。

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