ミュージアムレポート

HOME > ミュージアムレポート > VOL.30 > 伝統と最新技術の融合で、展示と保存の両立を追求 MOA美術館

新素材研究所の杉本氏はMOA美術館のリニューアルにあたり、「創立者・岡田茂吉の願いを継承した美術館」、「伝統と現代を融合したデザイン」、「素材の見立てによる空間の創造」をコンセプトに、さまざまな挑戦を行っている。とくにこだわったのは、美術品がつくられた中世や近世に使われていた素材や技法を、現代の空間に溶け込ませることだ。

壁面展示ケースの前に築いた黒漆喰の壁はガラスへの映り込みを防ぎ、低反射ガラスの効果も重なり、作品の正面に立つとまるでガラスがないように見える。写真奥の屏風は、実は露出展示を行っている。しかし、来館者にはどれが露出展示で、どれがガラスの向こうの展示なのか、まったくわからないほど。

また、漆喰の壁は展示導線の役割も果たしている。幾人もの左官職人の手によって仕上げられた黒漆喰の壁は、「江戸黒」と呼ばれる深いグレーで、威圧感なく展示空間になじんでいる。

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