ミュージアムレポート

HOME > ミュージアムレポート > VOL.38 > 静寂したほの暗い空間に御神宝が浮かび上がる。 宗像大社神宝館

来館者を最初に出迎えるのが、国宝の金製指輪(上の写真)だ。展示室に入ってすぐの、壁面で仕切られたコーナーには室内照明はなく、壁面の説明パネルを照らす照明のほかは、展示ケース上部に縦に並んだ3つのスポット照明だけである。室内の暗さに目が慣れない来館者には、金製指輪だけが浮かび上がるように見える。しばらく鑑賞していると、まわりの暗さに徐々に目が慣れてはくるが、それでも目を凝らしてやっと展示ケースの存在に気づくほどである。
展示ケース上部の3つのスポット照明は、いずれも特殊な超狭角のスポット照明で、正面中心部の手前から中央、奥と3方向から金製指輪一点をライティングしている。また、指輪を置いている展示台の表面に黒の無反射シートを貼っているため、指輪に反射した光の映り込みもない。金製指輪が際立って見えるのは、そのためである。

通常、独立展示ケースの天井面の素材にはスチールが使われ、スポット照明を通す部分だけ、丸く穴が開けられる。しかし、それでは開けた穴のエッジ部分に光が反射して、エッジが光ってしまう。わずかな反射光であっても、暗闇のなかでは非常に目立つ。そこで、スチールに代えてガラスを採用し、スポット照明を通す部分だけを丸く残して、それ以外を真っ黒に塗装して使用した。

ほかにも、展示ケース上部の照明ボックスの厚みを極力薄くするため、3つの超狭角のスポット照明を横に寝かせ、その態勢で下向きに照射できるよう、反射板を使うなど、様々な工夫が凝らされている。


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