ミュージアムレポート

HOME > ミュージアムレポート > VOL.47 > 真上から差し込むスポットライトで浮かび上がる曜変天目の小宇宙 静嘉堂文庫美術館

世界に3点しか現存しない国宝・曜変天目(南宋時代、12~13世紀)。室町時代の文献『君台観左右帳記』において、「曜変」は"陶製"の唐物茶碗「土之物」のなかでもっとも貴重で高価な茶碗であった。静嘉堂文庫美術館所蔵品は、徳川将軍家から春日局を経て、その後、淀藩主となる稲葉家へ長く伝えられたため、「稲葉天目」とも呼ばれる。1934年に入手した岩﨑小彌太は、表千家久田流の茶道を嗜んでいたが、「天下の名器を私に用うべからず」として、生涯一度も使わなかったという。

展示ケースは免震機構付きの特注品。車椅子利用者や子どもも茶碗の内側がのぞけるように、床面の高さは70センチに設定されている。1年がかりの照明検証により、満天の星空のような神秘的な美しさが浮かび上がるライティングを実現した。

ケース内の上部照明で全体をやわらかく照らしながら、上部中央に設置したスポットライトで集中的に見込みだけを照射することにより、斑紋の光彩を華やかに輝かせている。このライティングは見込みの外にはみ出さないように設定しているので、茶碗の足元に無駄な影が生じない。ケース床面からは茶碗側面にスポットライトを当て、胴の黒釉を表情豊かに見せる。展示ケース内の照明だけでは、茶碗の口縁にわずかな影が残ったため、それを展示室天井の2つのスポットライトで解消している。

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