ミュージアムレポート

HOME > ミュージアムレポート > VOL.53 > 数々の新機軸を搭載した 累計197メートルもの壁面ケース 大阪市立美術館

リニューアルで新たに導入した壁面展示ケースは 12 ヵ所。ケースの幅をトータルすると、全長197.4mにもおよぶ大型案件となった。

作品の形状や種類に合わせた展示ができる背面壁可動ケースは2ヵ所に導入された。

工芸品や屏風など立体的作品と、掛け軸や書画など平面的な作品を同時に展示する場合、必要な奥行きが異なるため、鑑賞者からそれぞれの作品への距離を適切に保つことが難しくなる。そこで、ケース内の背面壁を4つに区切り、それぞれを個別に手動でゆっくり前後に動かし、500mm~1200mmの間で奥行きを調整できるようにした。

写真手前は、6曲1双の「洛中洛外図屏風」(江戸時代・17世紀、大阪市立美術館蔵、田万コレクション)。右隻から左隻にかけて、祇園祭の山鉾巡行、二条城、徳川将軍の行列が細密に描かれ、小さいながら生き生きとした人々の姿に思わず見入ってしまう。中ほどから奥は、背面の壁がぐっとせり出し、掛け軸・額装がガラスを介していることを忘れそうなくらいの近さで鑑賞できる。左端は、東洲斎写楽「三代目市川八百蔵の田辺文蔵」(江戸時代・1794年、大阪市立美術館蔵、植田喜久子氏寄贈)。歌舞伎役者の顔面がアップで描かれており、至近距離だからこその迫力が見どころ。

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